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私が目指すところ
 
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     最近では、妹のほうも強くなってきて、何かするとかえってこっぴどく叱られるので危害を加えることもなくなりましたし、妹のほうも扱いが上手になって、もう大分障害についても分かってきていますが小さい頃は大変でした。
娘が小学4年のとき私がクレジット会社の事務局長をしているときに3時ごろ、妻から泣きながら電話があって、塾に行っていたら興奮して、お友達の頭をたたいたので親子ともども外に出ろといわれ、車に乗せたら妻の軽乗用車のフロントガラスを蹴破ったということがありました。 
仕事も放って、すぐに行ってみたら2人してしくしく泣いているではありませんか、情けなくて、情けなくて泣いていたのでしょう。
なんとかなだめて家に連れ帰ったこのことが、結局この仕事を始める引き金になりました。
女の先生のおっぱいに噛み付いたこともありましたが、私も母親も何度となく突然食いかかってきたのでその痛みのひどさは知っていましたからその先生はたまらなかったに違いありません。
それから、校長先生の態度が一変しまして、小学校のお荷物という感じがもろに伝わってくるようになりました。
ただ、かまれた先生は立派な先生で、今でも連絡を取り合う関係です。
わたしも胸をけられて肋骨をおったことがあります。
そのころ、お世話になっていた短大の先生に相談して聞いたことがあります。
「この子の将来はどうなるのでしょうか、学校に行っている間はなんとか想像が付くのですがその後はどうなるのでしょうか」と今考えれば他人事のように聞いたことがあります。
そうしたら、その先生が間髪をいれずに「今のNさんを受け入れるところは今の日本にはないでしょうね。」と応えられました。
要するに、卒業したら病院行きですねということですよね、わたしは唖然とするのと同時にそんなことがあってなるものかという怒りにも似た感情がこみ上げてきました。
それまでは、障害にかかわる教育者や福祉施設や行政はわれわれを救ってくれる偉い人だと思っていましたが、それが違うということがはっきり分かりました。
それから2年間1人で考えて、ひそかに知識を蓄え、娘が小学6年生のとき独立しました。
娘のほうも普通学校でにっちもさっちも行かなくなったので6年生の2学期から養護学校に転校させて、障害というものにまともに向かい合うようになりました。
正直言って、それまでは普通のサラリーマンでしたから会社人間で、子どもの問題行動に悩まされながらも、何一つ判っていなかったといわざるを得ません。
会社を辞めて、小規模作業所を作ろうと思い、平成10年の4月1日からK高等養護学校を卒業したばかりの4人の子どもと一緒に自宅の6畳の洋間でまねごとを始めました。
今日は親御さんが多いので、うちに通っている利用者はもう立派な大人なんですけど話しやすいので子どもといわせてもらいます。
お聞き苦しかったら申し訳ございません、お許しください。
最初の2年間は何の補助もありませんでしたから、悲惨なスタートでした。
保護者負担金を月に1人あたり1万5千円づつもらって後は植木鉢やハーブティーを作って得る収入が1年目は年間に10万円で、2年目が90万円くらいでした。
3年目からは長崎市から補助金が年間500万円出るようになり、売上が120万円くらいでした。
4年目の平成14年1月に新しく出来た法律にのっとって法人化し、社会福祉法人萌友会の経営する小規模通所授産施設コリアンダーの家として再スタートしましたが、その年は10ヶ月足らずで190万円売上がありました。
そして去年が5年目で240万円の売上で、今年は直売店コーナーを浜の町アーケードの中に設けて週3日パートさんが入っていますので350万円くらい行くでしょう。
利用者は最初の4人から作業所時代は定員10人、今は増改築して定員15人で在籍15人です。
ただし、小規模通所授産施設は一応10人から19人までの施設ですから来年は利用者や行政や親御さんたちと相談してパートさんをあと1人増員する予算ができればあと4人くらい受け入れようと思っています。
前置きはこれくらいにして、今日のお題目である「わたしの目指すこと」についてお話しようと思います。
月並みですが、最初に言ったように「障害者が普通の生活が出来るように」というのが私の目標です。
この仕事を始める前からこの目標は変わらないし、今後も変わらないと確信していますが、やっているうちに細かいことが良く見えてきました。
どういうことかというと例えば普通の生活という言葉です。
今日ここに何人くらいおられるでしょうか、大体100人くらいとすれば、皆さん普通の生活というのは何種類くらいあると思いますか。
私は、多分100人おれば100種類の普通の生活があると思います。
はっきりいえるのは、私は私の生活が普通の生活だと思っているわけですね、たとえ先ほど来申し上げたとおり、女の子でありながら自閉症のため世間から見れば非常識なことばかりする娘と一緒に暮らしていてもです。
多分、みなさんも大なり小なりこんな経験はされているでしょうから、よくお分かりでしょうね、いかがですか、自分は普通の生活をしていないと自他共に認めると自信を持って言える方がいらっしゃいますか。
多分、いらっしゃらないと思います。
つまり、そういう方は入院されているか、施設に入られているだろうと思います。
刑務所とか、病院とか、特別養護老人ホームとかに入っている方は多分ここに来られないでしょうから。
   
 
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